
「海ごみアイデア発明ワークショップ(四国中央市 × 東京大学)」が開催されました。
2022年10月29日に「海ごみアイデア発明ワークショップ(四国中央市 × 東京大学)」が、四国中央市の愛媛県漁業組合川之江支所で開催されました。
このワークショップのために、東京大学から海洋観測システムなどを開発しているOMNIプロジェクトのメンバーが、四国中央市まで足を運んでくれました。
参加者は、市内に住む小学生11名。ワークショップでは、保護者の方々と一緒に和気あいあいと楽しみながら、海ごみ、特にマイクロプラスチックについて深く学びました。今回の記事では、このワークショップについて報告させていただきます。
イベントの流れ
(前半)
- 四国中央市 大西室長の挨拶
- OMNIの紹介と、OMNIメンバーの紹介
- 四国中央市の海について知ろう!
- 研究者のお仕事について、OMNIのこれまで作ってきた機械を紹介
- 海ごみ、マイクロプラスチックについて学ぶ
(後半)
- アイデアを膨らませるための妄想インタビュー
- 妄想インタビューを元に機械のイメージをスケッチ
- マイクロプラスチックを集める機械の工作
大規模海洋観測プロジェクトOMNIについて
OMNIは、気候変動や食物資源、天然資源といったさまざまな問題を解決する「鍵」が海洋にあると考えており、海に浮かぶ低コストセンサーを用いて、海洋から詳細でかつ多様なデータを収集することを目指しています。さらに、その観測データは一般公開されており、誰でも利用可能だといいます。OMNIは、単独で実施するプロジェクトではなく、多くのパートナーとタッグを組んで研究開発を推し進めることで、大規模展開を実現しています。
今回のワークショップは、そんな「東京大学のOMNIプロジェクト」と協力して開催されました。ワークショップ内では、参加した小学生とOMNIメンバーが一緒になって「海ごみ」について考えます。その後、海ごみの課題を解決できる機械を想像し、身近なものを使って工作をすることで、そのアイデアをカタチにするという流れで進みました。
工作はとてもアナログな作業ですが、ここからアイデアが生まれ、デジタル技術を使うことで課題解決のヒントに糸口になるかもしれません!
ワークショップ前半
まずは、東京大学生産技術研究所特任教授の木下先生を筆頭に今回のワークショップに参加している5名のOMNIメンバーの自己紹介とOMNIの活動内容について、さらには研究者のお仕事の紹介などが行われました。
研究者といえば、白衣に試験管…というイメージを持たれる方が多くいらっしゃるかもしれません。しかし、OMNIはそういったイメージではなく、「デザインの力を使い課題を解決する研究」をしているそうです。そのためデザイナーの方も多く所属しているといいます。
ワークショップの中では、OMNIがこれまで開発してきた海洋観測システムの機械を紹介してくれました。これらの機械は、はじめの段階では身近なものを使い、自分達でデザインをして作成するそうです。
実際にOMNIが作った機械を使って、四国中央市の海にどのくらいマイクロプラスチックがあるかをチェックしました。

OMNIが開発した機械の説明を聞く子どもたち

海に浮かんでいる黄色の浮きの部分から海水を吸い込みます

吸い上げられた海水が機械の中を通り、マイクロプラスチックがあるかを確認します
その結果、少しマイクロプラスチックが取れたものの、四国中央市の海はキレイということでした。
その後、マイクロプラスチックについての動画を見て、どうしてマイクロプラスチックが問題なのかを学びます。
マイクロプラスチックとは、5mm以下に分解されたプラスチックのことをいいます。ここまで小さくなると人の手ではなかなか回収できません。そのマイクロプラスチックを海洋生物が食べてしまうといったことが、近年問題になっているのです。
マイクロプラスチックは、年間で800万tずつ増えているという研究結果もあり、2050年には魚よりプラスチックゴミが多くなる可能性があるという、研究データもあります。
プラスチックが環境によくないということは分かっているものの、プラスチックは今の私たちの暮らしに深く浸透しており、さらに便利すぎるため、なかなか「0」にできないというのが現実です。
なるべくプラスチックを使わないなど、出来ることはたくさんありますが、「今の段階で海に流れてしまったマイクロプラスチックを回収するにはどうすればいいか?」というのが、今回のワークショップのテーマです。
「この課題を解決するには、あっと驚く発明が必要です。海のゴミをなくすにはどうしたらいいでしょう?算数の問題みたいに答えは一つではありません。皆さんのアイデアを私たちの研究に活かさせてください」という木下先生の言葉でワークショップの前半は締めくくられました。
ワークショップ後半
ワークショップの後半はお待ちかね、さまざまなものを使って、マイクロプラスチックを回収する機械を作る工作です。
早く機械を作り始めたい小学生たちですが、まずは、保護者の方がインタビュアーになり「妄想インタビュー」が行われます。
この妄想インタビューによって、マイクロプラスチックを回収する機械のイメージを膨らませていくのです。
妄想インタビューの質問事項は以下の通り、
- あなたと海の思い出を教えてください。それはどんな思い出ですか?
- あなたが将来大人になった時、友達や未来の家族とどんな海の思い出を作りたいですか?
- もしも、あなたが四国中央市の市長になって、海を守るために自由にどんなことでもしても良いとなったら何をしたいですか?
- それはなぜですか?
といったもの。
インタビューを元に、「自分は海を守るためにどんなことができるのか」それぞれ考えます。次に妄想インタビューから得たアイデアを、絵に落とし込んでいきます。
スケッチが終わると、いよいよ製作に入ります。
子どもたちはいっせいに用意された、工作グッズのところへ。

たくさんの工作グッズを見て目を輝かせる子どもたち

真剣な面持ちで作業を進めます
OMNIメンバーとコミュニケーションをとりながら、自分たちが考えた機械を製作していきます。
そして完成後は、いっせいに発表タイム!
【参加者が考えたマイクロプラスチックを回収する機械】
- 海の水を吸い上げてゴミをとる機械
- 磁石でゴミをとる機械
- 吸盤にマイクロプラスチックがくっつく機械
- 海綿(スポンジ)を使いゴミをとる機械
- 水中ドローン、ゴミを集める魚ロボット
など、たくさんのアイデアが!
最後に木下先生より「みんなの積極性やアイデアの豊かさに驚きました!海ごみについて保護者の方も一緒に考えていただき、非常に有意義なワークショップになりました」と総評をいただきました。
【参加者の声】
参加した子ども達からは、
- 製作が楽しかった
- マイクロプラスチックについて知れてよかった
- みんなのアイデアを見るのが楽しかった
といった声が聞かれました。
【参加者の保護者の声】
子どもたちと一緒に参加した保護者の方からは、
- 子どもと一緒になって考えるのが楽しかった
- 子どもたちの発想の柔軟さに驚きました
といった感想をいただきました。
それぞれが海のために何ができるかを考えると同時に、アイデアを形にしていくプロセスも学べた今回のワークショップ。親子で真剣に海について考えた有意義な時間となりました。
デジタル技術を使って「海にマイクロプラスチックがどのくらいあるか」を知ったり、マイクロプラスチックを回収する機械を考えたりする体験を通じて、参加者の意識改革が図られ、愛媛県のDXの前進が感じられるイベントとなりました。
- 団体の概要
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エールラボえひめ
- プロジェクト紹介
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【みんなで海を調査!】親子向けOMNIワークショップを開催します【四国中央市】
募集なし
自治体
「日本一の紙のまち」四国中央市は、市街地は瀬戸内海に面するほか、法皇山脈と四国山地との間に吉野川支流の銅山川を有して、まち・うみ・やまと多様な表情をもっています。 そのような我がまちにとって”海”はとても大切なものです。 ”…ですが、その海のことを私たちはどれだけ知っているでしょうか?” その問いが、この取組の出発点です。 この取組では、知っているようで知らない身近な”海”の現状について、小学生親子を対象として参加者の皆さんとともに考えていきたいと思っています。 <取組内容> ①海について詳しくなろう! (さまざまな海について、勉強します) ②実際に、地元の海を調べてみよう! (海の観測デモ体験を行います)
所属コミュニティ
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主担当者
合田 充雄
プロジェクト実施時期
2022年09月
活動エリア
四国中央市