
愛媛県が実証実験をバックアップする 「DXコミッション」を活用しよう!
2021年4月にスタートした「エールラボえひめ」も、早いものでもうすぐ1年が経過しようとしています。そして、2021年の年末には、エールラボえひめで初のDXコミッションが行われました。「DXコミッション」というのは、県内外の事業者に対して、愛媛県がバックアップし実証実験の場を提供する取り組みのことです。
ただ、「DXコミッション」という言葉自体は浸透していないので、今回のプロジェクトインタビューでは、エールラボえひめのディレクターである金澤一行さんにDXコミッションについて詳しくお話を伺いたいと思います。
エールラボえひめのDXコミッションは、こんなにすごい!
廣瀬:改めまして、こんにちは!金澤さんとはエールラボえひめの運営でたくさんお話をさせていただいていますが、こんな風に改めて取材をさせていただくのは初めてですね!
本日はよろしくお願いします。
金澤さん:そうですね。よろしくおねがいします!
廣瀬:さて、2021年の年末にエールラボえひめで初のDXコミッションが行われました。(エールラボえひめ初のDXコミッションの記事「『なんかいい場所、好きな場所』には『音』の共通点があった!エールラボえひめ『初のDXコミッション(実証実験)』を実施!」の記事はこちら→https://yell-lab.ehime.jp/interview/693.php )
この「DXコミッション」という言葉はまだ浸透していませんが、実はすごく画期的な要素がたくさんだとお聞きしています。詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか?
金澤さん:「DXコミッション」というのは、愛媛県が事業者に対して提供している「DXの実証実験の場」のことです。今の時代は、昔のように事業者が自分たちで考えて便利だと思うものを作って売る、というスタンスが主流ではなくなってきています。新しい製品やサービスを作るには、ユーザーがちゃんと喜ぶものが作れているのか、今までずっと解決しなかった問題がきちんと解決できるようになっているのか、きちんと売れるニーズがあるかどうかをしっかり検証しながらビジネスを作っていく方法に変わってきています。なので、実証実験ということがとても重要になっているのです。
簡単なリサーチであれば民間だけで解決できる場合も多いのですが、提供しようと思っているサービスが公共の課題の解決や、社会全体で取り組むビジネスだと、行政と歩調を合わせておかなくちゃいけないものもありますよね。そういう時、普通の事業者では行政のパートナーを見つけることって難しい場合が多いと思います。
まして、スタートアップで、まだ実績のない事業者が実証実験を一緒に行ってくれる行政のパートナーを見つけることはとても手間がかかりますよね。

首都圏官民共創拠点SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)でエールラボえひめのイベントを開催した時の様子。一番左が金澤さん。
ここがすごいDXコミッション3つのポイント
廣瀬:そうですね。事業者と行政がタッグを組むと聞いただけで難しいイメージがあります。エールラボえひめのDXコミッションでは、それが可能で、むしろ積極的に受けいれていますということでしょうか?
金澤さん:そうです。このDXコミッションには、特に注目してほしい点が3つあるのでお伝えさせてください!
まず、1つ目が、「県内外問わずオープン」ということです。
事業者でも同じだと思うのですが、行政と一緒に何かしようと思ったとき、いきなり代表窓口に行って「やりましょう!」と提案しても話は進みにくいと思います。現実的には、つながりがあって、政策や課題を話し合える場を持っていないと難しいところがあります。しかし、DXコミッションでは、たとえ愛媛県に関係がない事業者だったとしても、エールラボえひめのプラットフォームからDXコミッションに申し込んでいただくことが可能です。
そして2つ目ですが、実証実験を行いたい事業者を「随時募集している」ところも画期的なんです。というのも、行政って基本的に予算で動いているので、予算を編成するのに1年くらいかかります。タイミングが悪かったりすると場合によっては2年くらいかかることも。でも、これだと民間の事業とはスピード感が合わないんですよね。
しかし、DXコミッションでは、実証実験を行いたい事業者を常に受け付けています。行政と実証実験がしたいってなった時に、「一番早く実証実験が行えるのが愛媛県です!」と言っても過言ではないと思います。
廣瀬:すごいですね!行政はゆっくりというイメージがありましたが、DXコミッションを使えば早く進められるんですね。最後のすごいことを教えてください。

2021年6月28日に行われたエールラボえひめ第一回「官民共創イベント」では、ファシリテーターを務められました。
金澤さん:では、最後の3つ目!「ちゃんと実証実験の担当部署がある」ところです。通常だと行政に「一緒に実証実験がしたい」と言っても「この仕事、誰が、どの部署が引き受けるの?」ってなってしまうこともあります。とくに、複数の課にまたがるような話だと、調整に時間がかかります。しかし、DXコミッションを利用していただければ、愛媛県庁のデジタルシフト推進課が実証実験の窓口になっているので、ワンストップでスムーズに連絡調整ができます。そのため、「〇〇に問い合わせください」という感じで、たらい回しになる心配もありません。さらに、愛媛県は県内の20市町が一体となってDXを推進していくことを宣言する「愛媛県・市町DX協働宣言」を行っています。実証実験の内容によっては、市町の方がいい場合もあると思うので、実証実験ごとに最適な自治体を紹介することにしています。
廣瀬:なるほど!行いたい実証実験によっては市町の方がフィットするときもありますよね!

エールラボえひめでは定期的にオンラインでイベントを行なっている。地域を良くしたいという気持ちはみんな同じ。
こんな事例がありました
廣瀬:DXコミッションでは、今までどんな例がありましたか?
金澤さん:はい。それまで、愛媛県とは全く接点のなかったMetaliumを経営している浅井さんと、松山市を舞台に実証実験を行いました。浅井さんは、場の雰囲気を音から分析して可視化するという技術を作っています。これを使って愛媛のいいところが可視化できたらいいよねということで、松山で実証実験をやってみました。
(エールラボえひめ初の実証実験の記事はこちら→https://yell-lab.ehime.jp/interview/693.php)
愛媛県で実証実験をしてもらって、愛媛県を好きになってもらえると嬉しいですよね。
廣瀬:そうですね。年末には、私も記事の作成のために実証実験に同行させていただきましたが、とても楽しかったです。
浅井さんも実験を終えて帰る頃には、「プライベートでもまた遊びに来たいです!」と愛媛県を好きになられていましたよ(笑)!

2021年12月に行われた実証実験の様子。左がコミュマネの武市さん、右が廣瀬。
全ての仕事は、誰かを喜ばせることにつながる
廣瀬:これからどんな風にDXコミッションが広がっていくといいと思いますか?
金澤さん:特定の誰かだけが得をするという場合は難しいですが、エールラボのDXコミッションはきちんと社会性があり、県民の皆さんを幸せにしたり、課題を解決したりするものであれば、ビジネスを通じて関わっていただくという方法も大歓迎です。
そして、県内の方にどんどん使っていってほしいですね。一番愛媛県をよくしたいと思っているのは愛媛県に住んでいる方たちですし、仕事を通じて地域のために何かをしたいと思っている人は多いのではないでしょうか?
世の中に対して意味のあること価値のあること、社会の課題を解決したいと思っている人たちは、もちろん民間の人たちの中にもたくさんいるので、そんな人を応援していきたいです。
廣瀬:私たちがしている仕事ってどうやっても社会と繋がっていますものね。
金澤さん:そうなんです。お金がいただけるって、そもそも誰かを喜ばせているからいただけるんですよね。全てのビジネスは、誰かを喜ばせているか課題を解決しているかのどちらかと言っても過言ではないかもしれないです。
地域課題を解決したい、地域を良くしたいっていう気持ちがある方に、DXコミッションをどんどん利用していってほしいと思っています。
- 団体の概要
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エールラボえひめ
- プロフィール
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金澤 一行(かなざわ かずゆき)
エールラボえひめディレクター
総務省認定地域力創造アドバイザーの資格を持ち、様々な自治体で公共政策のコンサルティングを行う。行政と民間の連携事業や地域住民自身が主体になって地域課題を解決する仕組みづくりなど、地域の力を最大限に活かすプロジェクトを多数実施。
早稲田大学 総合研究機構 · 総合政策科学研究所研究員